デジタル化が進む現代において、Webサイト、Webサービス、アプリケーションといった各種サービスは、生活の一部として重要な役割を果たしています。日常的に利用するこれらのサービスにおいて特に重要なのが「ユーザビリティ」の視点です。本記事では、ユーザビリティの意味や定義、その重要性、そしてユーザビリティを向上させるために必要なポイントについて解説します。
ユーザビリティ(usability)とは
ユーザビリティ(usability)とは、「使いやすさ」を意味し、特にWebサイトやアプリケーションの操作性に対して使用されます。ユーザーが簡単かつストレスなく操作できることを指し、「ユーザビリティが高い(良い)」と表現されます。
Webサイトやアプリにおいて、ストレスなく操作できることは非常に重要です。どんなに魅力的なサービス内容であっても、ユーザビリティが低ければユーザーの離脱を招く可能性があります。反対に、ユーザビリティが高ければユーザーが定着し、最終的にはコンバージョンやユーザーの満足度も向上します。
ユーザビリティの定義
ユーザビリティ(usability)とは、どのような基準で判断すれば良いのでしょうか。ここでは、代表的な二つの定義をご紹介します。
1. 国際標準化機構(ISO)による「ISO 9241-11」規格
国際標準化機構(ISO)とは、国際規格を策定している組織であり、「ISO 9241-11」はこの規格の「9241」シリーズの11番目の項目です。この規格では、ユーザビリティを「特定の利用状況において、特定のユーザーによって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、ユーザーの満足度の度合い」と定義しています。
- 有効さ
ユーザーが指定された目標を達成するうえでの正確さおよび完全さ。 - 効率
ユーザーが目標を達成する際に正確さと完全さに関連して費やした資源。 - 満足度
不快さのないこと、および製品使用に対しての肯定的な態度。 - 利用状況
ユーザー、仕事、装置(ハードウェア、ソフトウェアおよび資材)、並びに製品が使用される物理的および社会的環境。
2. ヤコブ・ニールセン氏による定義
ヤコブ・ニールセン氏は、Webサイトのユーザビリティ研究の第一人者として知られています。彼はユーザビリティの指標として以下の5つを挙げています。
- 効率性
システムは、ユーザーが一度学習した後に高い生産性を発揮できるよう、効率的な使用を可能にすべきです。 - 学習のしやすさ
システムは、ユーザーがそれを使って作業をすぐに開始できるよう、簡単に学習できるように設計されるべきです。 - 記憶しやすさ
ユーザーがシステムをしばらく使わなくても、再度使用する際にすぐに使えるよう覚えやすくする必要があります。 - エラー発生率
システムはエラー発生率を低くし、ユーザーがシステム使用中にエラーを起こしにくくするべきです。また、エラーが発生しても簡単に回復できるようにし、致命的なエラーは起こらないようにする必要があります。 - 主観的満足度
システムは、ユーザーが個人的に満足し、好きになるように、楽しく利用できるように設計されるべきです。
これらの指標を通じて、ユーザビリティの評価が可能です。ニールセン氏の定義は、「ISO 9241-11」の定義に比べるとやや限定的ですが、「ISO 9241-11」の枠組み内に位置づけることができます。
UI/UXとの関係性・違い
ユーザビリティの関連用語として、「UI(ユーザーインターフェース)」と「UX(ユーザーエクスペリエンス)」が挙げられます。
- UI(User Interface)は、ユーザーが必要な情報を得るためのボタンやメニューなどの接触点を指します。ユーザーが情報に容易にアクセスできるように設計された要素です。
- UX(User Experience)は、製品やサービスを通じてユーザーが得る総合的な経験を意味し、感情や満足度も含めた広範な概念です。
UIはUXを向上させる一手段として位置づけられるため、「UI/UX」と並べて記載されることが多いです。具体例で示すと、どこからでもトップページに戻れるホームボタンが「UI」で、そのホームボタンが分かりやすい位置に配置されていることが「ユーザビリティ」、そしてその全体の流れで得られる満足感や経験が「UX」となります。
このように、ユーザビリティはUIとUXと密接に関連しており、切り離せない関係性となっています。
アクセシビリティとの違い
ユーザビリティとよく比較される概念として、「アクセシビリティ」があります。
ユーザビリティは「特定のユーザー」に対して設計されるのに対し、アクセシビリティは「高齢者や障がいのある方」を含む、より広い範囲のユーザーにとって使いやすい設計を指します。両者は「利用者にとって理解・利用しやすくする」という点で共通していますが、対象となるユーザーの範囲が異なります。
例えば、色彩に関して例を挙げましょう。Webサイトで重要な項目を赤文字で、リンクを青文字で表記することがあります。一見すると親切に見えますが、色覚障がいのある方には他の文字との区別がつかないことがあります。
アクセシビリティを考慮する場合、必須項目には*印を付ける、リンクにはアンダーバーを付けるなど、色彩以外の方法で情報を区別する工夫が必要です。
このように、ユーザビリティとアクセシビリティは密接に関連しており、いずれも利用者にとって重要な要素となっています。
ユーザビリティの重要性
ここからは、ユーザビリティの重要性について、さらに掘り下げて見ていきましょう。
ユーザビリティは、Webサイトやアプリなどの「能動的メディア」が広がる中で、その重要性が高まっています。テレビやラジオなどの「受動的メディア」は、一度チャンネルを合わせるとメディア側から一方的に情報が伝えられるのに対し、Webサイトやアプリはユーザーが自ら情報を取得しにいく「能動的メディア」です。
そのため、情報への導線が分かりづらいと、ユーザーが離脱する可能性が高くなります。さらに、サービスの解約や悪評の広がりにつながる恐れもあります。たとえ面白いコンテンツを作成しても、ユーザビリティが低ければ、ユーザーは離れていってしまうでしょう。
例えば、スマホアプリの分野では、App Storeだけでも100万以上のアプリがリリースされています。膨大な数のアプリの中で、自社のアプリを選んでもらうためには、コンテンツの内容だけでなく、ユーザビリティを高めることが非常に重要です。
さらに、ユーザビリティを改善することは、ユーザー満足度の向上だけでなく、リテンションレートや最終的なCV(コンバージョン)率の向上にも繋がります。
ユーザビリティを高めるには?
オンラインサービスの提供においては、実際に使用しているユーザーの顔が見えないため、制作者側の視点のみで設計されることが多くあります。しかし、制作者の視点だけに頼ると、ユーザーにとって使いづらい、独りよがりなサービスになりかねません。
ユーザビリティを向上させるためには、ターゲットユーザーを明確に設定し、そのユーザーに適したUI/UXを考えることが重要です。
ここでは、以下の2つのポイントについて詳しく解説します。
ターゲットユーザーの定義が必要
ユーザビリティを高めるにあたって、最初に行うべきことはターゲットの定義です。ユーザビリティの評価基準は、環境や目的によって変わります。同じサービスでもユーザーによって評価が異なるのはもちろん、同じユーザーでも環境が変われば評価も異なります。
例えば、気象情報を提供するサービスを考えてみましょう。「今日の天気」だけ知りたいAさんと、「花粉や紫外線、気圧など身体に影響を及ぼす情報」も知りたいBさんがいたとします。この二人はサービスに求める情報量が異なるため、Aさんにとって使いやすいものがBさんには物足りないと感じられるかもしれません。
また、Aさん自身も「今年から花粉症になった」や「天候に左右される仕事に転職した」などの環境変化があれば、今まで満足していた機能に物足りなさを感じるようになるかもしれません。
このように、ユーザビリティの評価は大きく変動するため、万人に受け入れられるサービスを作るのは困難です。ターゲットを明確にし、ターゲットのニーズに合ったサービスを提供することが重要です。
ユーザーに合わせてUI/UXを作り込む
ターゲットユーザーの定義が決まったら、次に行うべきはユーザーに合わせたUI/UXの設計です。
先ほどと同様に、気象情報を提供するサービスを例に説明します。
「今日の天気」だけを知りたいAさんの主な利用目的は、「今日雨が降るのか(傘が必要か)」を判断することだとしましょう。この場合、降水確率を%で表示するよりも「折りたたみ傘」や「大きな傘」のアイコンで表示する方が、直感的に理解・操作しやすいサービスとなり、ユーザビリティが向上する可能性があります。
一方、「花粉や紫外線、気圧など身体に影響を及ぼす情報」も知りたいBさんの場合、天候によって体調が変化するため、自分で情報をカスタマイズ・管理できる自由度の高いサービスの方が、ユーザビリティが高くなるでしょう。
ユーザビリティ向上には定量分析と定性分析が必要
ユーザビリティを向上させるためには、どういったデータを基に考えればよいのでしょうか。ユーザビリティ向上に必要なデータを取得するためには、「定量分析」と「定性分析」の両方を行う必要があります。
定量分析とは
定量分析とは、主に分析ツールを使用して数値によるデータを分析する方法です。例えば、Googleアナリティクスによるアクセス解析や、選択式アンケートなどが該当します。
定量分析のメリットは、数値を用いるため客観性が高く、認識のズレが生じにくい点です。しかし、多くのデータを取得する必要があることや、数値に現れないユーザーの心理を読み取れないことがデメリットとして挙げられます。
定性分析とは
定性分析とは、数値では表せない質的なデータによる分析方法です。定性分析には、自由回答式のアンケートや専門家によるエキスパートレビューなどが含まれます。
特に効果的な定性分析の手法として、ユーザビリティテストが挙げられます。ユーザビリティテストでは、ユーザーにプロトタイプを実際に使用してもらい、その使いやすさや意見を収集します。これにより、定量分析だけでは見えなかったユーザーの心理を読み解き、具体的な改善策を検討することができます。
まとめ
Webサービスやアプリ運営における「ユーザビリティ」の重要性について解説しました。
インターネットが普及する以前は、良いコンテンツを作ればユーザーが自ずと集まることが多かったかもしれません。しかし、現在では膨大な数のコンテンツの中から選ばれ、継続して利用されるためには、コンテンツの質だけでなくユーザビリティの良し悪しも重要です。
サービスの開発には多くの費用と時間がかかるため、目的を定めずに制作・運営を始めるのではなく、ユーザビリティをしっかり意識し、ターゲットに合ったサービスとなるように常に改善を続けることが求められます。



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